No.25 大切な愛猫とのお別れ
3日後に1泊での出張を控えた晩秋の夜、長い時を共に過ごしてきた飼い猫が逝った。食欲が急になくなり、医者に診てもらったら癌だと告げられて7日、呆気なく彼は逝ってしまった。最期の時彼は苦しむこともなく、小さく私を呼ぶように声を上げた。彼の痩せ細った身体を擦りながら、私は彼に声をかけた。その声を聞いてすぐ、彼は静かに息を引き取ったのだ。
出張の時には、病院で預かってもらう予定だった。それを待たずに、私の心配を断ち切るかのように彼は逝った。無理やりに舐めさせていた療養食、軟水のペットボトル、栄養剤が後に残った。彼のご飯皿がポツンと取り残されていた。まるで私のようだ。まだ暖かい彼の身体を擦り続けながら、それでも私の頭の中は彼の葬儀、どうしてやるかを考えていたのだ。1番近い練馬区のペット霊園に連絡すると、今日は合同火葬の予定しかないと言う。ここに残っているのはあの子の魂が入っていた肉体だけ、本当は個別に葬儀をあげてやりたかったけれど、合同火葬をお願いした。ただし遺灰を少し分けてくれるよう頼みこんだ。
陽が上ってから、親しくさせてもらっていたご近所の家に足を運んだ。その家の庭に秋桜やマーガレットが美しく咲いていたのを思い出したからだ。彼のことを話すと、彼女も同行すると言う。私の様子が心配だったのに違いない。腕いっぱいに花を抱えて部屋に戻ると、どうしても彼がいつも寛いでいた窓際に目がいってしまう。外から帰ると、彼はいつもそこから私を見ていたのだ。そして「お帰り」というように、ゆっくりと伸びをしてから私の元にやって来るのだ。私はこの習慣を繰り返してしまうだろう、しばらくは。
「お前は凄い力を持っていたのね」その瞬間彼を失った実感と、彼を確かに愛していたのだという温かい想いの両方が私の中に溢れ、満ちたのだ。彼を失った辛さと、幸せだったという感謝に襲われたのだ。彼の周りを花で埋め尽くしながら、喪失感と確信の両方を私は味わっていた。これからペット火葬に行くけれど、お前の身体は私たちが出会ったあの公園に還してくるからね。土に還って、しばらくしたらまた会いにいらっしゃい。いつでもいいから。