No.20 奥様達の心配、子供の大学の学費と住宅費

近所の奥様たちと話をする時、話題は大抵子供たちのことだ。子供たちが学校に行き始めると受験のこと、塾のこと、大学や就職の話題になる。同世代のこどもがいると、やはり話しやすいし相談もしやすい。こういう場には積極的に会話をリードする奥様が何人かいて、相槌をうちながら子育ての参考にさせてもらったものだ。

そんな奥様の1人で、何かと仲良くしてもらっているSさんが最近沈んでいる。ゴミ捨てや幼稚園のバスの送迎の折に顔を合わせても、挨拶を交わす程度ですぐその場を去ってしまう。最近もらったブルーベリーでケーキを焼いたので、それを持って訪ねてみた。

「どうぞ入って!」Sさんは思いの外元気そうだった。ケーキを差し出すと、コーヒーを淹れるのでとお茶に誘われる。ケーキの甘い香りとコーヒーの芳ばしい香りが部屋を満たし、幸せな気分になってくる。Sさんとこうしてゆっくり顔を合わせるのも久しぶりだ。「最近、忙しいの?」その私の問いかけに、彼女が頷く。「ちょっとパートに集中しているので」。子供が手を離れてくると復職したり、パートで働いたりする人は多い。

「ブルーベリーとチーズは良く合うわね、美味しい」、そしてコーヒーとの相性も抜群だ。「でも何故、急に?」、「家の子が、4年制大学に行きたいと言い出して。何考えてるんだか」「どこって具体的に決めてるの?」「慶應、早稲田、立教だって」彼女がため息を漏らす。「まあ受かるかどうかが問題なんだけど、それならそれで塾にもやらなきゃならないし、万が一合格したらしたで入学金とか学費とか、部屋もどこかの賃貸見つけないといけないしねえ。仕送りとか考えると、とても家でゴロゴロしてられなくなって」。彼女の娘さんは、今年女子校に入学したばかりだったはず。

でも、これは他人事ではない。家も小学校に上がったら、本格的に仕事のことを考えるべきかもしれないのだ。「部屋を見つけると言っても、東京だと多分10万前後はするでしょう?いくら1LDKでいいと言っても。後で賃貸のサイト調べてみるけど」。今度は私がため息を漏らす番、「やれやれ!」。バイトさせるにしても、女の子では色々不安があるし。私と彼女の久々のお茶会は、ため息と共に悩み深くなっていったのだ。

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